「5秒ルール」でコントロールを取り戻す
- ぴょん・あえり
- 2021年5月21日
- 読了時間: 9分
更新日:2021年7月12日

今日中にやりたいこと。
今月末までにやらなければならないこと。
死ぬまでに一度は挑戦したいと思っていること。
分かっているなら今すぐそれに取り掛かればいいものを、なぜかその場で足踏みばかり。
「明日やれば」「やる気になったら」「いつか勇気が出たら」
自分にそんな言い訳をして先延ばしにしてしまうこと、きっと誰にもあるだろう。
実はこれ、ある脳の仕組みを考えると、いたって自然な反応だ。
この記事では、
➢やりたいこと・やらなければならないことを先延ばしにしてしまう脳の仕組み
➢意思のコントロールを取り戻す「5秒ルール」
といった情報をシェアしたい。

<記事の目次>
4.5秒ルールとは

参考資料:YouTubeチャンネル「Impact Theory(インパクト・セオリー)」
YouTubeチャンネル「Impact Theory(インパクト・セオリー)」は、Tom Bilyeu(トム・ビリュー)が運営している自己啓発系の大人気チャンネル。
Impact Theoryのテーマは、「人間の可能性を高め、夢を実現するための知識を紹介する」というもの。毎回ゲストスピーカーを呼んで、そのゲストの専門知識を集中的に紹介する。
自己啓発関連が多いものの、医療や科学分野の専門家をゲストに招くこともあり、幅広いジャンルをカバー。各分野の最新情報を知れるのも魅力的だ。
Mel Robbins(メル・ロビンス)という人
Mel Robbins(メル・ロビンス)はアメリカのテレビ番組(CNNやFox)で刑事弁護士としてコメンテーターを務めるところからキャリアをスタート。
2011年、自身の体験をもとに自己啓発の本を出版し、Tedxで初めて「5秒ルール」をプレゼンしている。2017年に出版した「5秒ルール 直感的に行動するためのシンプルな法則 」は全米ベストセラーを果たし、地で講演するインフルエンサーとなる。
長年パニック障害を患っていたことを公表しており、彼女の講演にはパニック克服を切望する人たちも多く参加している。
Mel Robbinsのウェブサイトでは、5秒ルール活用のためのオンラインコースも。
モチベーションなんて大嘘!
Impact Theoryのインタビュータイトルは、「Motivation is Bullsh*t(モチベーションなんて大嘘)」。
なかなか大胆で興味深い。
「いつか勇気が出たら」、「やる気になったら」、「明日から」と自分に言い訳をして、やりたい事・やらなければならない事を先延ばし。これは、人間の脳が機能する仕組みを考えると、いたって自然な反応だ。
なぜなら、脳は嫌なこと・難しいこと・怖いこと・傷つくことを遠ざけるようにできているから。
ところが、やりたい事・やらなければならない事にかぎって、嫌なこと・難しいこと・怖いこと・傷つくことだったりする。新たに何かを始める場合は大なり小なり勇気・戸惑い・難しさを感じるものだし、やらなければならない雑用や掃除や家事は嫌なこと・面倒なことだ。
そういったものを遠ざけるようにできている脳が、「よし、やるか!」と自発的にモチベーションを発生させることはない。大抵の場合、居心地のいい現状維持に落ち着いて終わる。
「明日こそ!」という魔法の言葉をつぶやいて。
しかも、やりたい事・やらなければならない事をいざ実行しようとした瞬間、「やっぱり今は止めとこうかな……」とか「どうしようかな……」とためらいを感じる場合が多い。
この「ためらい」がクセ者だ。
「ためらい」を感じた瞬間、それがマイクロ1秒であっても、ストレス信号となって脳が感知する。すると脳は即座に「ストレスを感知しました!」と警報を発して、そのストレスから身を守るためにありとあらゆる手段で対抗するのだ。
この脳の対抗手段は数えきれないほどあるが、たとえばリスクを巨大化してみせて、実行に至らせないよう仕向けたりする。
たとえば、トイレ掃除をしなきゃいけないと考えた瞬間、「面倒だな…」とためらった場合。今いる位置からトイレまでの距離が、ものすごく長く感じる。まるで、近所のコンビニまで歩いて行くほどに。さらに面倒に感じた次の瞬間、そういえば掃除用の洗剤がもうすぐ切れそうだったような気がしてくる。そういえば、トイレットペーパーの補充もしなきゃいけなかったかも?
こんなふうに考えばかりが膨らんで、面倒くささが2倍、3倍と強くなっていく経験、心当たりがあるのではないだろうか。
この一連の働きは、どんなに小さなためらい(例えばトイレの掃除をしようと考えた瞬間に「面倒だな」とマイクロ1秒ためらうこと)にも働くから、なかなか現状を変えることができないという典型的な現象も理解できる。
面倒だと思っていることをいざ実行するとき、「面倒だな」と思わない人なんているだろうか?
「いつかやる気になったら」という日は、単に待っていても永遠にやってこない可能性が高い。やりたい事・やらなければならない事が「面倒だな」「難しいな」「怖いな」といったネガティブな感情をわずかでも伴うとき、自発的に湧いてくるモチベーションなど存在しないのだ。
このストレスに対する脳のサバイバル機能から意思のコントロールを取り戻すために登場するのが、5秒ルール。
5秒ルールを実践すれば、「マイクロ1秒のためらいによって送られるストレス信号」の法則から脱出できる。
5秒ルールとは
その名のとおり、「5、4、3、2……」と5から順にカウントダウンしていくというルール。
0になったら発射するロケットのごとく、0になったら行動に移すと心に決めて、5から順にカウントダウン。
これだけだ。
シンプルを通り越して、本当かいなと疑いたくなるレベル。
どんな時にカウントダウンするかというと、やりたい事・やらなければならない事をいざ実行しようとして「やっぱり今は止めとこうかな……」とか「どうしようかな……」とためらう、その瞬間だ。
ストレス信号が発生するこの瞬間にカウントダウンすることで、5秒ルールは効果を発揮する。
重要なのは、「5、4、3、2……」と0に向かってカウントしていくこと。
数字が増えていくカウントだと5秒ルールの効果は出ない。
カウントダウンすることで、ストレス信号を遮断。ウジウジためらっている自分を切り替え、パッと行動に出るエンジンを始動させることができる。
なぜ効果があるのか(科学的根拠)
まず第一に、ためらいによって生まれるストレス信号を遮断するからだ。
カウントダウンすることで、ストレス信号に集中しようとする脳の注意をそらす。すると意識が数字に集中して、前頭前野を活性化させる(前頭前野は、行動を変化させたり新しいことを学ぶときに活性化する場所)。
おかげで「やろう」という意志力が活性化され、ストレス信号に勝つことができるのだ。
「やっぱり今は止めとこうかな……」「どうしようかな……」と毎回ウジウジためらって結局いつも行動に起こせずいる場合、そのためらいは思考パターンのクセと化している。
この思考パターンのクセは、無意識レベルで反応するクセの一つとして、大脳基底核(無意識的に繰り返す行動や感情をコントロールする場所)という場所に記憶されている。
無意識レベル、というのが恐ろしい。
ためらう(無意識レベルで反応するクセの可能性大)
↓
脳がストレスを感知
↓
身を守るため、脳があらゆる手段で対抗(リスクの巨大化など)
↓
更にためらう
↓
ストレスが強まる
↓
脳がさらに強いストレスを感知
対抗する働きはますます強まる
↓
けっきょく行動に移せないまま終わる
この悪魔のループからなんとか抜け出す手助けをしてくれるのが、5秒ルールだ。
5秒ルールがスタートの儀式に
5秒ルールには興味深い特徴がある。 それは、実践すればするほど5秒ルールが強化されていくということだ。
「ためらい」がクセとして脳に記憶されてしまうように、5秒ルールも脳に記憶される。
最初は0という数字に押されるようにして行動に移していたのに、いつの間にか、カウントダウンを始めた瞬間から、0と同時に発射できるようエネルギーをチャージするようになるのだ。
そのうち、5秒ルールは良いスタートを切る儀式となっていく。
ためらいにサヨウナラ!ベッドから起き上がるのも、トイレ掃除も、勉強も、エクササイズも、「明日から」じゃなく「0になったら」実行に移せるようになる。
パニック発作にも効果あり
5秒ルールはパニック発作にも効果がある。
カウントダウンすることで、恐怖に集中しようとする脳の意識をそらすことができるのだ。
パニック発作に5秒ルールを使うには、いくつかポイントがある。
①身体の反応に対し、脳は後から理由付けする。と理解すること
②0になったら「身体の反応」に対する理由を自分で理由付けする
どういうことかというと、パニック発作のときに身体を襲う様々な症状(震え、動機、冷や汗など)は、いわば無意識の反応で、「なぜそうした症状に襲われているのか」という理由は脳が後付けする。
※このメカニズムについては、別の記事「怖いから発作が出るのか、発作が出るから怖いのか」で詳しく説明しています。
つまり、脳がしっかり「これはパニック発作だ」と理解するまで、「原因不明だけどとりあえず身体が何かに強く反応している」という状態。
多くの場合、パニック発作の身体症状は交感神経が優位になって出る「興奮」だ。
エクササイズをしている時、ギャンブルで自分の賭けが今にも勝ちそうな時、運転していたら道路にいきなり人が飛び出してきた時――こういう時に起こる身体の反応は、実はまったく同じ。
その「興奮」がポジティブなものかネガティブなものか、脳がしっかり認識するのは後からなのだ。
そのメカニズムを5秒ルールに上手く利用することで、身体の反応(パニック発作)に対する脳の理由付けをコントロールできる。
これがメル・ロビンスの主張だ。
<パニック発作に5秒ルールを使った場合>
・発作の身体症状(興奮)が出る
(脳はまだ興奮の理由を理解できてない)
↓
・意識が興奮に集中する前に、5秒ルールでフォーカスをカウントダウンにシフト
(脳が興奮の理由を考えるのをブロック!)
↓
・「0」になったら、「なぜ興奮しているのか」についてポジティブな理由を作って何度も唱える
例:これから彼 / 彼女に会えるからテンション上がる!
これからショッピングでいろいろ見て回るのが楽しみ!
この前買った宝くじが当たるかもと思うとワクワクが止まらない!
(脳に「なぜ興奮しているのか」について理由を与えてあげると、脳は納得して集中を解く)
↓
・ネガティブな理由が見つからないと、脳は興奮を恐怖に結び付けず、興奮はサッと引く

「モチベーションなんて大嘘!」はメル・ロビンスのお決まりの台詞。パワフルで説得力のある彼女のスピーチは、大衆を納得させるオーラを持っている。
5秒ルールは使えば使うほど身についていくものなので、繰り返すほどメリットがありそうだ。
記事を読んで興味を持ったなら、彼女の本を手に取ってじっくり読んでみてはどうだろう。
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